人生って

徳川家康は「人の一生は、重荷を背負いて遠き道を歩むが如し、急ぐべからず」と言っています。

自分のすすむべき道は?
これがわかれば、もはや今宵死んでもかまわないという覚悟が生まれるのかもしれません。

重荷とはなになのか?
遠き道とはなになのか?
急いではならないこととはなになのか?
これらを考えながら歩くことが、つまり「生きていくこと」ではないでしょうか。

私は生きるということは そんなに大変なことではないと思います。

荷は重いと思えば重くなります。
荷物はバランスをとるために、持っていないと歩けないものだと私は思っています。
つまり、人生という道を歩くための必要アイテムなのです。

道は いつのまにかできています。
その道を歩きながら、まだここか?まだここなのか…と思えば更に遠く感じてしまいます。

吹く風を感じながら 肩のチカラ抜いて 時には人の肩も借りながら歩いてく・・・。
人生って、そんな感じじゃあないでしょうか。

明けない夜はない

シェイクスピアの「マクベス」に「The night is long that never finds the day.」という台詞があり、
一般的には 「明けない夜はない」 と訳されています。
最近、世界的にはギリシャ問題、国内では口蹄疫問題、等々色々と暗い話題が多いからでしょうか、
昨日出席したある会議で来賓の方の挨拶のなかに、「明けない・・・」という言葉を挟まれた挨拶がありました。
たしかに「今が苦しくても、必ず幸せな時はやってくるから」という意味で日常的に使われていますから、
多くの人たちが、この言葉に励まされているのでしょう。
そうしたことを考えると、今のご時世には的を得た挨拶なのかもしれません。

でも、穿った見方をすれば、その当事者の方は深く暗い夜(闇)のなかに身を置き、
明けるのを今かいまかと待ち焦がれているのかも知れません。
この状況は、希望的な気持ちではなく、「辛い・切ない」という思いが強いような気がします。
明けるのを待ち焦がれる夜は、より暗く、そして長く感じることでしょう。

長い夜も、朝を迎えたら必ず明けます。
闇のなかで明けるのを待ち焦がれるのがいいのか。
目が覚めたら夜が明けていたというのがいいのか。

私の場合は後のほうですね。「果報は寝て待て」ではないけれど、
自分の分相応に、素朴に生きていく生き方がいいような気がしています。

新社会人おめでとう

この言葉を私は十年、フレッシュマンたちに贈ってきた。
だが今年は少し趣をかえる。
何十年に一度の不況の時に君は出発する。
これを不運と思うか?
違う。チャンスだ。
今この時こそが”千載一遇”の時だ。(辞書を引きなさい)
今、日本も、世界もさまざまなものが変わろうとしている。
政治のあり方も、経済のとらえ方も、
企業の理念さえ揺らいでいる。
あらゆるものが見直されている。
自分たちだけが富や幸福を得ればいいという考えでは
世界は閉塞するのがわかった。
エリートや、特権を持つ人々のやり方は通用しなくなった。
では何もかもが変わるのか? 違う。
世の中がそう易々と変わるものか。

千載一遇。
汗をかこう。
誇りと品格を持て。

道に迷ったら元の場所に帰るのだ。
初心にかえろう。基本にたちかえろう。
皆がしてきたことをやるのだ。
”汗をかこう”懸命に働くのだ。
これを君たち若者がダサいと思うなら、
君たちは間違っている。
真の仕事というものは懸命に働くことで、
自分以外の誰かがゆたかになることだ。
汗した手は幸福を運んでいるのだ。
だから仕事は尊いものなのだ。
仕事は君が生きている証しだ。
ならば働く上で、生きる上で大切なものは何か。
姿勢である。
どんな?
それは揺るぎない
”誇りと品格を持つ”ことだ。
これを実行しようとすれば、
それは夕刻には疲れも出るだろう。
そんな夕暮れは、喉に爽風とおるがごときハイボールの一杯で
元気をとりもどそう。

君に乾杯。

                      伊集院 静

      (サントリー酒類株式会社新聞広告より)

パパとおやじから

新成人おめでとう。
今日から君たちは大人の仲間入りだ。
でも大人って二十歳になれば誰でもなってしまうものだろうか。
それはやはりおかしいと私は思う。
しかし無事に二十年生きてきて、
今日の空を見ているだけで素晴らしいことだ。
さまざまな二十歳があって世の中だ。

パパは娘に静かに言った。
「大人の自分を大切に生きて欲しい。パパがママに出逢った日のように、
まぶしくて、綺麗な日本語を話す女性になってくれよ」
オヤジはセガレに言って聞かせた。
「自分のことだけで精一杯の大人になるんじゃないぞ。
いい友だちを作り、信じられるものを見つけるんだ」
まぶしい自分になることも、
美しい日本語が話せるようになるまでも、
良き友を得ることも、信念を発見することも、
一年、二年じゃできやしない。
いいものは時間がかかる。
見てくれで人を判断するな。金で価値判断をするな。
すぐに手に入るものは砂のようにこぼれる。
本物を手にするのは苦しいぞ。
パパと娘は、オヤジとセガレは、この日、初めて乾杯をした。
この日を待っていたんだ。なんだか美味いな。
「酒は品良く飲みなさい。人も、酒も品格だ」
二十歳の君たちに乾杯。

この日を待っていたんだ。

                伊集院 静

    (サントリー酒類株式会社新聞広告より)